TCFD提言への対応

TCFD提言への対応

TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース
(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
主要国の金融当局が取り決めた気候変動に対応するための枠組み。「①ガバナンス」「②気温上昇が事業戦略に及ぼすリスクと機会」「③リスク管理の体制」「④温暖化ガス排出の指標と目標」の4項目を開示

気候変動の影響は年々深刻さを増しており、経済・社会・環境に大きな影響を及ぼしています。国際社会は低炭素・脱炭素社会の構築に向けた動きを加速しており、企業が果たすべき役割の重要度が増しています。
当社グループは、地球環境問題をはじめ、人権の尊重、従業員の健康、労働環境への配慮や公正・適切な処遇を実現するための啓蒙活動などサステナビリティを巡るあらゆる課題に取り組んでいます。
気候変動への対応につきましては、消費電力の削減や再生可能エネルギーの導入、自社のCO2排出を相殺できる「Jクレジット」等の活用を組み合わせて23年度にグループ全体のCO2排出量の実質ゼロを達成しました(排出量の最終確定は6月中旬の見込み。対象はScope1とScope2)。当初は「24 年度末までの CO2排出ゼロ」を目標に掲げていましたが、1年前倒しで実現しました。
また、当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」へ賛同し、TCFDが提言するフレームワークを活用した情報開示をしています。今後もTCFD提言に沿った気候変動関連情報の開示を進めることで、更なる脱炭素化の推進を図り、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

(1)ガバナンス

ガバナンス

世界的な課題となっている気候変動リスクへの対応は当社グループとしても重要な課題の1つと認識しています。当社グループではSDGs (持続可能な開発目標)に本格的に取り組むため、2021年3月に国連が報道機関に協力を呼び掛ける「SDGメディア・コンパクト」に署名・加盟し、2021年4月に社内横断プロジェクトチーム「SDGsプロジェクト」を発足させました。
また、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題を理解し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをグループ全体で一層強化するため、2022年6月にSDGsプロジェクトを常設の委員会である「サステナビリティ委員会」へと発展的に改組しました。
「サステナビリティ委員会」は石川一郎代表取締役社長が委員長に就き、グループ各社の事業部門の責任者を招集し、グループ全体のサステナビリティ全般の方針や目標・計画などを立案、実行します。取締役会は、「サステナビリティ委員会」から重要事項や活動状況について報告を受け、気候関連課題への対応方針および実行計画等についても審議・監督を行います。

ガバナンス

(2)戦略

シナリオ分析の概要

当社グループでは、TCFD 提言にて例示されている気候変動がもたらすリスク・機会を元に、シナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析においては、2015年締結の「パリ協定」で設定された「2℃以下」シナリオを含む複数の温度帯のシナリオを選択、設定していく必要があるため、低炭素社会への移行によって影響が顕在化する1.5 ℃シナリオと、気候変動に伴う物理面での影響が出る4℃シナリオの2つのシナリオを選択しました。

戦略

【1.5℃シナリオ※1】
気候変動に対し厳しい対策が取られ、2100年時点において、産業革命時期比の気温上昇が1.5℃程度に抑制されるシナリオ。政策規制、市場動向、技術、評判等などの面で、低炭素社会への移行に際するリスクが高まる。
※1 インパクトを試算する際のパラメーターは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IEA(国際エネルギー機関)の情報を参考にRCP2.6シナリオを使用。

【4℃シナリオ※2】
気候変動への厳格な対策が取られず、2100年時点において、産業革命時期比4℃程度気温が上昇するシナリオ。自然災害の激甚化、海面上昇や異常気象の増加などの物理的リスクが高まる。
※2 インパクトを試算する際のパラメーターは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IEA(国際エネルギー機関)の情報を参考にRCP8.5シナリオを使用。

戦略

1.5℃以下シナリオ

1.5℃以下シナリオにおいては、政府の環境規制強化にともなう炭素税導入や、再生可能エネルギー需要の増加による価格上昇など費用の増加、電力消費量を削減するための設備投資の増加、発注先の温暖化対策費用の番組制作費への転嫁による番組制作コストの増加が想定されます。また環境問題をはじめとしたサステナビリティ意識の高まりにより、放送局は情報発信者としての役割をこれまで以上に求められることになります。もしその姿勢が消極的と受け取られた場合、当社事業に対するスポンサーや視聴者から懸念が高まることが想定されます。
当社では、再生可能エネルギーの導入に加え、主要なスタジオにおいてLED照明を導入するなど省エネ、節電に取り組んでおり財務的な影響は軽減される見込みです。また、番組制作においては、環境問題やサステナビリティをテーマとした社会要請に応えるコンテンツを制作・発信することで当社コンテンツへの需要が高まることが考えられます。さらに、環境への取組みなど非財務情報を十分に開示することにより、当社に対する評価や信用が向上し、当社コンテンツへの需要が高まることも考えられます。

4℃シナリオ

4℃シナリオにおいては、異常気象の増加、激甚化により、放送停止事故の増加、放送・制作の維持が困難になることが想定されます。平均気温の上昇や気象パターンの変化に伴う異常気象の慢性化により、屋外での撮影等の時間的な制限をはじめとして、番組制作は様々な制約を受けることが想定されます。放送は、『⽇頃から⽣活に必需の情報をあまねく届け、災害や国⺠的な関⼼事など重要な情報を瞬時に伝達できることから、極めて公共性の高い社会基盤の⼀つ』とされているので、当社はあらゆる気候変動リスクにも対応するために、放送設備の強靭化や従業員の被災リスクの低減に努め、災害等の緊急時にも放送を維持できるようにBCP(事業継続計画)体制を全社ベ一スで策定し、技術革薪も見据えながらBCP体制の見直しを常日頃から進めていきます。

炭素税の導入による影響

気候変動リスクによる財務的影響については、政府の環境規制強化にともなう炭素税の導入によるものが考えられます。そのため、GHG排出量が2020年度と同等の場合の4℃シナリオおよび1.5℃以下シナリオにおける2030年および2050年の炭素税導入にともなう影響額を試算しました。また、試算にあたっては国際エネルギー機関(IEA)のシナリオや国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のシナリオ、現在の炭素価格(排出量取引制度、炭素税、エネルギー課税)を用いて試算しています。なお、当社グループは今後、再生可能エネルギーの導入等によりGHG排出量を削減していく予定のため、実際に炭素税が導入される時点では、この影響は軽減される見込みです。

戦略

(前提条件)
・参照シナリオ「STEPSシナリオ(導入済みもしくは公式発表済みの政策が実施された場合のシナリオ)、IEA(2020)「World Energy Outlook 2020」」
・当社 温室効果ガス排出量(2020年度):約7,971t-CO2

(3)リスク管理

リスク管理

当社グループのリスク管理体制は、「リスク管理・コンプライアンス委員会」が中心となり、「リスク管理規程」に基づき、気候変動リスクを含めたグループ内のリスク情報を一元的に集約し、対応が必要と認められたリスクについては適切な予防対策を講じています。「リスク管理・コンプライアンス委員会」は、グループ各社にリスク管理責任者を置き、グループ全体のリスクを把握し、その影響を最小化するための対策の構築を指示し進捗を管理しています。当社グループは、気候変動に関するリスクも全社的な重要リスクの一つと位置付けており、気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、複数のシナリオに基づく分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。特定したリスク・機会はサステナビリティ委員会を中心に議論し、重要度の高いものについては 「リスク管理・コンプライアンス委員会」へ報告されるほか、リスク管理の状況や重大なリスクの判断に関しては、取締役会へ報告されます。

(4)指標と目標

GHG(温室効果ガス)排出量

2022年度のGHG排出量(=CO2排出量)は、Scope1(事業による直接排出)とScope2(電力消費による間接排出)の合計が1,627トンでした。21年11月の天王洲スタジオを皮切りに、22年度は六本木本社、神谷町スタジオ(日経虎ノ門別館)、住友新虎ノ門ビルの主要4拠点で再生可能エネルギー由来の電力に切り替えるとともに、スタジオ照明のLEDへの切り替えも進めGHG排出量の削減に取り組んでいます。
また、当社グループでは、持続可能な社会の実現に向けて、SBT(Science Based Targets=「パリ協定」に基づく企業による温暖化ガスの排出削減目標)として求められるGHG排出削減レベルを考慮し、23年度にグループ全体のCO2排出量の実質ゼロを達成しました(排出量の最終確定は6月中旬の見込み。対象はScope1とScope2)。当初は「24 年度末までの CO2排出ゼロ」を目標に掲げていましたが、1年前倒しで実現しました。GHG排出量の削減にあたっては、化石燃料を用いない再生可能エネルギーの導入や自社のCO2排出を相殺できる「Jクレジット」等を積極的に活用すると同時に、社内の省エネ、節電も一層心掛けることで、脱炭素社会の実現を目指していきます。また取引先などの排出量を示すScope3を含めた削減目標の策定も目指します。

指標と目標

<集計範囲の説明>
テレビ東京グループおよび国内外の主要施設の電力消費量、燃料使用量を集計(Scope1、Scope2)